栗山町 小林家。

築118年の家を 継ぐこと、守ること、つなげること。

栗山町 小林家。

「北の錦」「まる田」などの日本酒で知られる、栗山町にある酒蔵「小林酒造」。
創業明治11(1878)年の酒蔵を代々受け継ぎ、守ってきたのが小林家です。
今年、築118年目を迎える小林家は、平成18(2006)年に、北海道の登録有形文化財に指定され、
昨年7月から一般公開をはじめました。


写真撮影:諏訪智也 http://www.swatt.jp

男は酒を造り、 女は家を守った。

 「北の錦」「まる田」などの日本酒で知られる、栗山町にある酒蔵「小林酒造」。創業明治11(1878)年の酒蔵を代々受け継ぎ、守ってきたのが小林家です。
 明治30(1897)年に建築された小林家は、創業者初代小林米三郎氏の自宅として建てられました。当時の北海道には、本格的な和様式建築ができる大工がいなかったため、米三郎氏の出身地であった新潟などから、宮大工を呼んだと思われるとか。完成するまで3年かかったそうです。
 小林家では、代々頭首が「米三郎」の名を襲名する習わしがあります。名前同様、二代目米三郎、三代目米三郎へと、家は受け継がれていきました。平成23(2011)年に三代目小林米三郎氏が他界し、その妻榮子さんが平成25(2013)年まで、3年間一人で暮らしていました。この小林家には極々当たり前の、日常の暮らしがあったのです。
 三代目の他界後、残された者たちには、この古い家を維持・管理するという大きな課題が残されました。初代から代々受け継がれてきた家ですが、なにせ100年超えです。今の時代では、あまりにも寒く、室内は段差だらけで不便で、決して使い勝手が良いとは言えません。
 取り壊すのは簡単です。が、北海道の厳しい気候風土に耐え、今日まで当時の姿を残す家です。そしてここには、北海道の歴史とともに歩み、酒を造り続けた男たちと、彼らを支えながら家を守った女たちの記憶と想いが刻まれています。
 やがて平成26(2013)年7月、三代目米三郎氏の長女である千栄子さんが代表となり、「先人の想いを、今を生きる私たちがしっかりと受け止め、次代に伝えていきたい」と、小林家の人々が住んでいたままの姿で、一般に公開することになりました。
「守りびと」の案内で、
小林家を見学。
 小林酒造に行くと、敷地内には誰でも自由に見学できる「北の錦記念館」や「大正・昭和の暮らし展」などがあります。「小林家」は、喫茶コーナーやギャラリーは、誰でも気軽に利用できますが、家の見学には予約が必要です。
 小林家は、全部で23部屋もあるため、1回ですべてを回ることはできません。そこで、3ヵ月ごとにテーマを決めた見学ツアーを実施しています。4~6月は「商家の商いコース」。見学は、1日4回、1回のツアーで10人程度が定員で、全てに小林家を守り継ぐ「守りびと(女性)」のガイドが付きます。ツアー開始前に、守りびとから事前レクチャーを受けてから出発です。

家を守るということ。 想いを継ぐということ。

 小林家見学ツアーは、二代目米三郎の妻、チノさんが端切れの布を縫い合わせた「千枚の布」から始まります。部屋からではなく、なぜ布なのか?それは、ここが博物館や記念館ではなく、実際に人が住み、暮らしていた家であり、家を守り継いできた家人の生活や暮らしへの考え方を、まず先に知って欲しいからという意味があります。
 小林家は、特に二代目米三郎氏の時代は、夕張炭鉱の全盛期に併走するように、大変な栄華を誇ったそうです。酒はどんどん売れ、政界にも進出し、お金と権力をほしいままにしていました。しかし、商家の華やかさの中にいてもチノさんは質素な生活で家を守りました。すり切れたり、破れたりした着物の端切れを「もったいないから」と使える部分を切り取り、当て布にしたり端切れを縫い合わせたり。
 裕福な商家の奥さんなら、もっと優雅な生活もできたでしょう。が、そうはしなかったチノさんの意志の強さと忍耐があったからこそ、時代に流されることなく、今日の小林家があるのかもしれません。

構造や機能は全く違うが、 ヒントはあちらこちらに。

 築118年の家なので、今の家とは構造も性能も全く異なります。家の中はとにかく寒く、段差も多く、階段もかなり急な傾斜です。しかし、どの部屋もとてもきれいに整えられています。各部屋にさりげなく置いてある年代物の調度品もホコリをかぶっているものは見当たりません。案内をしてくれた千栄子さんは「ネズミは出るは、カマドウマは出るは、もう大変なんですよ」と笑って話していましたが、端切れをコツコツと縫い続けたチノさんのように、毎日コツコツと家の手入れをしているのでしょう。
 これから家を建てる人はきっと、機能的な間取りで、毎日の掃除や経年劣化のメンテナンスもしやすいように、さまざまな工夫を取り入れると思います。そこは、これから家族が生涯暮らす家です。もしかしたら、子供たち、その孫たちにも受け継がれる家になるかもしれません。家を守り、次代へつないでいくという想いと覚悟、小林家で感じてみませんか?

見学のマナーは モデルハウス同様です。

 小林家の見学は予約制ですので、電話で申し込んでください。これからの季節、素足にサンダルで出かけることも多くなりますが、他所の家に上がるのに裸足は失礼です。最近、モデルハウスでも裸足の方を見かけますが、くれぐれもご注意を。また、お子様連れの方は、展示物の破損や汚損にも気を付けてくださいね。もちろん、見学しながらの飲食もNGです。

小林家

http://www.kobayashike-maruta.com/
■夕張郡栗山町錦3丁目109番地
●TEL:0123-76-7228
●FAX:0123-76-7292
●文化財保存協力費/お一人様1,000円(中学生以上)
※施設保存の都合上、見学できない部屋があります。
※その他、詳しくはHPをご覧ください。