エコの島、ゴットランド

北欧の暮らし方

sustainable energy in Gotland

ストックホルム近郊のニネス港から、フェリーで約3時間のバルト海上。
ゴットランド島は、国内外問わず多くの人々が憧れている夏のリゾート島として有名だ。
世界遺産で知られるヴィスビーを始め、史跡や素晴らしい眺望など見どころも多い。
ほかにも、この島が世界から注目されていることがある。それは「エコ」。
自然エネルギーによる、持続可能な社会の実現に取り組む
ゴットランドのもうひとつの姿だ。
Photo by Munehito Taniguchi

ゴットランドの象徴的な風力発電
山がなく平地が続く地形から、いつも風が吹いている島で古くから風力を利用。島内のあちこちで古い風車を見ることができる。500kwの生産量の風車の設置費は約500万SEK(約7000万円)。海上にも5基が稼働している。

ゴットランド島が目指す 持続可能でクリーンな社会へ

スウェーデンのエコ政策のベースには、290の自治体の取り組みがある。
ローカルエリアだからこそ実現しやすく、また住民の意識レベルも高まる。
そんなゴットランドのエコ政策を紹介。

市民レベルで進められるエコへの取り組み

 バルト海に浮かぶリゾートアイランド、ゴットランド島。その中心的な町・ヴィスビー市は、12世紀頃からハンザ同盟の重要な交易の拠点として発展し、現在も中世の趣を残している。島内各所にも、サマーコテージやアトラクション施設、スパ、ヴァイキングの史跡など見どころ豊富で多くの観光客が訪れている。
 その島が、近年「エコアイランド」という視点からも注目を浴びている。
 スウェーデンは、「1世代以内に持続可能な社会を達成する」という目標を掲げるエコの先進国だ。1992年に、リオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議で採択された行動計画書「アジェンダ21」に基づき、国内全ての290自治体が地域レベルで、このガイドラインを導入している。中でもゴットランド島は積極的に自治体でエコに取り組んできた先進的な所だ。1992年から実質的なスタートが始まったという。
 島の面積は3140㎡で人口は約5万7600人。主な産業は農業と観光、年間約75万人が訪れるという(※)。島は石灰岩でできており、これも資源のひとつ。古くから建材や、主な工業であるセメント製造の原材料として石灰が活用されてきた。
 この小さな島で、石油や石炭のエネルギーから100%再生可能なエネルギーに転換し、2025年を目標に持続可能(サスティナブル)な社会の実現に向けて各政策が行われている。
 クリーンなエネルギーとして風力発電や天然ガスの利用、石油からバイオチップを使ったヒーティングシステムへの転換、徹底したゴミの分別などだ。ゼロ・エミッションつまり完全なリサイクル、廃棄物ゼロを目指して、廃棄物を利用した製品づくりなどに取り組む企業の例もある。また、幼稚園や学校などの敷地内にコンポストを設置するなど、子どもたちへの環境教育にも力を注いでいる。
 島の南側、ネースウッデンという地域の海岸には、約100基の風車が林立する風力発電パークがある。現在、島の電力のうち約21%を風力エネルギーでまかなっているという。島全体では、スウェーデン全体の約25%を占める約160基が稼働している。ここは25年ほど前に作られ、1983年に1基が誕生。国内でも古く、実験的な側面も持つパークだ。
 風車を管理しているのはスウェーデン大手の電力会社ヴァッテンフォール社。このうち同社が所有するのは10%。それ以外は地域住民による協同組合や自治体、個人などが将来的な投資目的として所有している。世界最大級の3MW(メガワット)もの生産量を誇る巨大風車もあり、年間の総生産量は約130MW。そのうちの何割かを電力会社に販売し利益を得ているが、助成金なしでは建設が難しい風力発電は、今後、商業として成り立つかが問題と言われている。
 また各家庭へ浸透しているのが、木材から作ったチップやバイオマスなどを利用した地域暖房システムだ。事業主が補助金を受けてヒーティングシステムを導入する例もある。ヴィスビー郊外にある「ホテルトフタゴーデン」では、館内で使用するお湯を、おがくずで作られたペレットを燃焼するヒーティングシステムと太陽光の両方を用いた給湯システムで作っている。
 またこのホテルでは、徹底したゴミの分別も行われている。カン、ガラス、プラスチックなど10項目。家庭でも同様に、ゴミは細分化され処理している。各自治体にあるリサイクルセンターなどでは、自家用車に粗大ゴミなどを積み、自分たちで捨てにくる姿が見られる。
 広々とした敷地内に新聞紙、紙類、段ボール、金属類、布、木材、家電製品などそれぞれ捨てる場所が決められている。リサイクルできないものは、入口で申請し、手数料を支払う。
 ビン、ペットボトルなどはデポジット制になっていて、スーパーマーケットの入口などに置かれた回収機でリユースに回すことができる。
 また、廃棄物を使ったゼロ・エミッションの事業例も注目されている。レストランなどから廃棄されるリサイクルガラスを再利用した作品を作っているガラス工房もそのひとつ。「ヴィスビーグラスブロッセリー」のマッツォンさんは、リサイクルガラスの独特な色合いを生かし、キャンドルホルダーやオブジェなどを手作りしている。
 ほか、ゴットランドの代表的な農産物のひとつで、出荷量の調整のため廃棄されていたニンジンを使ったマフィンも成功例。島内の雇用増や輸出による利益享受などの効果もあったという。
 こういった、身近な「エコ」を目にし、またその恩恵を受けることにより地域住民への意識に働きかけることができる。それが、ゴットランド島の先進的なサスティナブル社会への原動力になっているのだ。

※人口、観光客数は2007年当時。

ヒーティングシステムを利用したエコホテル

ペレットを燃やし、ある一定の温度になるとソーラーシステムに切り替わる。ソーラーパネルによる発電と異なり、パネルの下を巡らせた細いパイプに水を通し、太陽光で温めるもの。以前は石油を使っていたが、このシステムを導入しエネルギーコストが半分になったという。ホテルとシステム管理業者はネットワークでつながっている。

スーパーマーケットのデポジット
店内入口にデポジット回収機があり、気軽に利用できる。種類によって異なるが25dlと33dlのビンは60オーレ(約10円)と交換。50dlだと90オーレだ(約15円)。

ゴミの回収
ヴィスビー市街中心部からやや離れたゴミ捨て場。みな大きな車で乗り付け、粗大ゴミなどを処理している。新聞紙やプラスチックなどリサイクル可能なものも回収。


※「スカンジナビアン・スタイルVol.18」より転載