スウェーデンの面影が残る街トゥルク

スウェーデンの面影が残る街トゥルク

フィンランドの街角

穏やかなアウラ川に沿うように広がるトゥルクは、古くから商業地として栄えてきた歴史ある街。
中世の香りを感じるトゥルク城や大聖堂。
街の灯を映す水面を眺めながら、宵の時間を楽しむ船上レストラン。
自家製ビールが味わえる、古い建物を活かしたユニークなテーマレストランやパブ。
駆け足の観光めぐりでなく、ゆったりと時間をかけて散策してこと魅力がわかる街だ。

Photo/by kyoko Honda
フィンランド南部に位置する第3の都市・トゥルクは、1229年にローマ教皇が司教をこの地に派遣したことにより建設されたと伝えられている街だ。13世紀にはスウェーデンが侵攻し、重要な拠点として城や教会が築かれ、16世紀頃にはスウェーデン支配下の中心都市として繁栄を迎える。その後ナポレオン戦争によりフィンランドがスウェーデンからロシアの大公国となると、1812年、皇帝によりここトゥルクからヘルシンキへと遷都が行われる。こういった歴史を見ると、トゥルクはスウェーデンとロシアに支配され続けたフィンランドを象徴するような街ともいえる。この時、ロシアが文化的な強制政策をとらなかったため、トゥルクにはスウェーデン文化とフィンランド文化が混ざり合った雰囲気が残されることとなったのである。街中の古い建物の看板にスウェーデン語の表記があり、郊外の麦畑の間にはスウェーデン特有の「赤い家」が見られる。現在でもトゥルクでは、フィンランド語の「Turku」以外に、スウェーデン語の「Åbo」という市名も使われている。

■トゥルク大聖堂

TUOMIOKIRKKO

 トゥルク城と並ぶのこの街のシンボル・トゥルク大聖堂。1100年代から建設され始め13世紀に初期の建物が完成した。その後何度も修復・増築を繰り返したため、外壁や内部にその境目がみとめられる。外壁はレンガ造りのゴシック様式で、1826年のとトゥルク大火災では上部が延焼、19世紀に作り直された。内部の壁画などは16世紀のままだという。2階には教会の祭礼道具や大聖堂の模型などを展示した博物館も併設されている。 

TUOMIOKIRKKO
①ここには30年戦争で活躍した軍人などが眠っている
②スウェーデン王エーリック14世の王妃カリン・モンスドッテルの棺
③天井部分の壁画の文様はかなり古いタイプのもの

■アボア・ヴェトス&アルス・ノヴァ

ABOA VETUS&ARS NOVA


 中世のトゥルクを知る「アボア・ヴェスト」と、現代アートを展示した「アルス・ノヴァ」の2つのミュージアムを合わせたユニークな施設。元は個人のマナーハウスだったという邸宅をアートミュージアムに利用するための工事中、地下7mから中世の街の遺跡が発見された。それを建物で囲い、見学者が間近に遺跡を見られるようにした珍しい展示スタイルが「アボア・ヴェスト」だ。年代は14世紀頃、市場周辺のものだという。建物の上部は焼け落ちていて、下のレンガの部分が発掘されている。発掘されたガラスの破片から復元したグラスなど、当時の生活をうかがい知る展示品なども並ぶ。
 「アルス・ノヴァ」にはフィンランドを代表するアーティスト、カウコ・レヘティネンやアクセル・ガッレン・カッレラなどモダンアートの作品を展示。のんびりテラスで寛げるカフェも併設されている。

ABOA VETUS&ARS NOVA
④発掘された街から大聖堂へ向かう、14世紀頃から残る道
⑤歴史を目の当たりに出来る展示方法。手を伸ばした先には14世紀に作られたレンガの壁が。内部では現在も発掘調査中
⑥建物を囲む壁には絵が描かれ、道行く人の目を楽しませている

■ルオスタリンマキ手工芸野外博物館

LUOSTARINMAEN KASITYOLAISMUSEO


 20軒ばかりの木造住宅が集まったこの一角は、1827年に起きたトゥルクの大火災で辛うじて焼け残った集落。木こりや船員などが住んでいた中流家庭の家が多い。道路造成の計画もあったが保存することになり、戦後、様々な手工芸、お店などに関する展示を集めた屋外ミュージアムと生まれ変わった。印刷所や時計屋、バイオリン工房など昔の職人の仕事や生活ぶりがよくわかるようになっている。それぞれの建物の中では、当時の雰囲気を醸し出す衣装を身に付けた人たちがおり、夏期には実演なども行っている。フィンランドの木造建築は角ログを組み、上にパネルを張ったスタイル。ここはそういった家の造りや庶民の家庭の様子も合わせて見学できる貴重な施設だ。一棟一棟、インテリアや間取りも異なるのでじっくり見ていくのがおすすめ。

LUOSTARINMAEN
KASITYOLAISMUSEO
⑦ボランティアで編み物の実演をしている女性。夏期は手工芸品の販売や実演が行われている
⑧時計屋の看板と内部。修理道具や古い懐中時計などが展示されている
⑨昔風の衣装で実演をする人。ここは製本所で、当時と変わりなく一つひとつ手作業で本を製本していく
⑩雑貨屋の店先。実際に駄菓子なども販売している
⑪印刷所。一つひとつ活字を拾って組み、版をつくっている
⑫下宿屋の一室。ベッドと小さな机と椅子が置かれている

■トゥルク城

TURUN LINNA

 スウェーデンがフィンランドを統治し始めた頃、1280年から建設がはじめられ、その後幾度が拡張されたフィンランドで最も大きな古城。本来は要塞としての役割を持っており、城が建て始められた当初は周囲を海に囲まれた島だったが、少しずつ隆起したため現在のような陸つづきになった。隆起して地形が変わっていくのに合わせ、外郭や建物が造成されるなど拡張した。城の外壁がまっすぐになっていないのは、元の島の形に合わせて造られたためだそう。グスタフ・ヴァーサ(デンマークから独立運動の末1523年にスウェーデン国王になった)の息子、第3代国王ヨハン3世とその妻カタリーナの居城でもあった。ルネッサンス時代の流行を取り入れた彼らの生活は華麗なものだったという。1600年代に大火に見舞われ、人が住める状態ではなくなったため、トゥルクがスウェーデンからロシアに移譲された1800年代には取り壊す話も出た。第二次世界大戦時にも被害を受けたが、戦後、本格的な修復が行われた。そのため内部には当時を知る調度品などは残されていない。後から建て増しされた外郭の建物では、ルネッサンスやロココ様式など、様々な時代の衣装や家具などが展示されている。


TURUN LINNA
⑬かつては水際に建っていたトゥルク城。現在でもこの周辺は少しずつ隆起しているのだそう
⑭城内部の壁画。匂い袋を下げた当時の女性の姿が描かれている
⑮家具のほか、貴族が使用していた衣装や小物なども展示
⑯時代ごとに分けてその当時のインテリアなどを展示している