好きなものを、長く大切にする暮らし。 北欧のスタイル。

「憧れの場所」で暮らす。 ダーラナ地方の伝統的な生活

スウェーデンの中部にあるダーラナ地方といえば、民俗衣装や音楽など伝統的文化が残されている場所として海外でも人気だ。シリアン湖の周辺には、どこか懐かしさを感じるカントリーな雰囲気にあふれた街が点在し、キャンプやスキーなどアウトドアも楽しめる。赤や青などのあざやかなカラーに植物をモチーフにした模様が描かれたダーラナ馬・ダーラへストに象徴される、素朴であたたかみのある「心の故郷」。
そんな伝統的なカントリーライフは、スウェーデン人にとっても憧れなのだ。
Photo / Kyoko Honda Motonobu Narikiyo

自分の好きなものを 長く大切にするというスタイル。 それがスウェーデンの暮らし。

 スウェーデンの首都ストックホルムから電車で移動すること約3時間ほど。中部に位置するダーラナ地方は、スウェーデン人も憧れる土地のひとつだ。6月の夏至の日に開催される伝統的な年中行事・夏至祭の舞台としても有名な地域で、特にレクサンドには数万人もの観光客が訪れる。
 湖水のそばに街があるという点ではストックホルムと同じだが、風景は全く異なる。湖畔から内に向かって斜面になっている土地に、スウェーデンの典型的な木造住宅である赤い家が建ち並ぶ。家と家の間に麦畑が広がっている「田舎の風景」は、やはり心が和む。日本でも他国でも、人はカントリーなものに魅かれるのだろう。スウェーデン人が「心の故郷」と呼び親しんでいるのがわかる気がする。
 そんな、皆が憧れる土地での暮らし。レクサンド在住のシャスティさんと息子さんのエリックさんたちに、「ダーラナ地方での生活」を見せてもらった。
「建てられたのは1800年代よ」とは、シャスティさんが住む家の「年齢」だ。ここもまた湖畔近くにあり、徒歩で数分のところには、ダーラナ地方の民俗的な情景を描いた画家、ヒューゴー・アルヴェーンの住居が残されている。周辺も伝統的な、赤い色に塗られた木造住宅ばかりだ。どこも基礎はそのままで内部だけリフォームしたり建て増しして数百年住み続けている。
 内部はとても快適だ。なぜこうも素敵な部屋を作り上げられるのだろう。何十年も使っているソファや家具。地元で手に入れた織物や木製インテリアグッズ。そして家族の写真が入ったスタンド。ひとつひとつを見れば、どこにでもあるようなものなのだが、空間としてとらえると、まさしく「憧れの部屋」に映る。
 ただ、自分の好きなものを手に入れ、長く大切にする、ということがポイントかもしれない。どれも手づくりで良い品質なもの、つまり値段も高い。たくさん持つのではなく、じっくり選んで、本当に欲しいものを求め、自分の暮らしの中にとりこんでいく、そんなスタイルだ。そして、外観やインテリアといった伝統に、使いやすい現代的なシステムキッチンなど、雰囲気を壊さずに、上手に「暮らしやすさ」を取り入れている。
 古いものも新しいものも、自分が良いと思ったもの、好きなものを選んでいるだけ。そんなシンプルさが、スウェーデンの「伝統」なのかもしれない。 

世代を越えて住み継がれる ダーラナ地方の典型的な赤い家。

ダーラナ地方の典型的な赤い家。「ファールンレッド」と呼ばれるこの色は、周辺から産出した銅を加工した顔料を用いたのが始まり。ダイニングの窓台にゼラニウムが飾られている。3方の窓から日が入り込んで明るい。陽が短く、冬が長いスウェーデンでは太陽の光はとても貴重だ。さわやかなブルーのテーブルウェアは、年季の入ったスウェーデンのストーンウェア・ホガナスケラミック。良品なものを自分の暮らしにとりこんでいくのが北欧スタイルだ。そして、北欧の男性はみな日曜大工や自動車など機械の整備は自分で行う。エリックさんの小屋にも、本格的な木工機械や工具がたくさん。

※「スカンジナビアン・スタイルVol.15」より転載